医学部進級補習授業報告(講義記録より)③(免疫学・生化学・臨床遺伝学)

清光で実施した医学部進級対策個別講義の一例です。下記に記載している科目や内容についてお困りの方は、清光の1対1の個別講義(オンライン)で対策を実施しましょう。お問い合わせはこちらから

〈医学部進級対策 講義記録より〉免疫学

補体の活性化と機能。古典経路、レクチン経路、代替経路から共通経路/C3コンバルターゼ活性による共通経路/C3タンパクの自発的加水分解。補体の活性を抑制するC1-INH/セリンプロテアーゼ阻害剤。C1-INH欠損/遺伝血管神経性浮腫。

補体の活性化は免疫の初期の応答です。いくつかの経路がありますが、一つの反応に集約され、アウトプットも3種類あります。補体の活性化のうち、古典経路、レクチン経路ではセリンプロテアーゼが関わりますので、その活性をある程度抑制するために、セリンプロテアーゼ阻害を行うC1-INHがあります。C1-INHが欠損すると、直接的な経路である古典経路、レクチン経路が制御できなくなり病気となります。一方で、セリンプロテアーゼはありふれた酵素なので免疫とは別の現象に影響します、血液凝固因子の活性化にもセリンプロテアーゼがあるのでC1-INHが欠損すると血液凝固が過剰となり、血栓などができやすくなります。またカリクレイン-キニン系ではセリンプロテアーゼがあるので、これがある程度抑制されないと、ブラジキニンが過剰に生産され、血管透過性が増し、浮腫が生じます。大学のレジメではカリクレイン-キニン系と浮腫との因果関係には触れておらず、「覚えるしかない」の一つとなっています。


〈医学部進級対策 講義記録より〉免疫学


体細胞での組換えおよび体細胞変異によるB細胞受容体BCR多様性の創出。生理学/心電図の原理。

B細胞の抗原受容体BCRと抗体は同じ遺伝子由来の体細胞組換え体タンパク質です。違いは、前者は膜タンパクですが、後者は分泌タンパクです。抗原の認識をBCRと抗体との間で同程度にするという目的には好都合と言えます。クラススイッチとともに体細胞の変異が多数蓄積して、抗体、BCRの多様性が生まれます。次回は免疫も続けますが、生理学実習分野の心電図についてやります。本日は概略をやりました。


〈医学部進級対策 講義記録より〉生化学

酵素反応速度論/ミカエリスメンテン式の導出過程。ラインウエーバーバークプロット。阻害なしおよび拮抗阻害様式での式の導出。

ミカエリスメンテン式は複数の導出過程が考えられるようです。自分が納得できる手法で一度全過程を追ってみてください。いくつかの仮定が設定され、それに基づいて式が立てられています。ミカエリスの式の理解の難儀さは、この仮定にあると思われます。仮定が理に適ったものであるのか確かめてください。つぎに、式の変形では定数同士、変数同士を両辺の片方ずつに集めてください。途中でKmを定義し、最後に[S]と反応速度だけの式になるようにします。拮抗阻害の式の導出を説明しました。不拮抗阻害、非拮抗阻害の区別についてはその命名法が混乱を来しますが、式を立てるヒントを出しました。これに基づき導出過程を演習課題としました。次回はヌクレオチド代謝をやります。

〈医学部進級対策 講義記録より〉生化学/代謝

リン脂質と中性脂肪の合成の接点、リン脂質の多様性の創出/CTPによるホスファチジン酸の活性化、ATPによるジアシルグリセロールの活性化。スフィンゴ脂質/スフィンゴシン骨格。コリ回路。グリコーゲンの合成/UDPグルコースへの変換、α1,4-結合の形成、還元末端へのグルコースの付加。グリコーゲンの分解/グリコーゲンホスホリラーゼによるグルコースの遊離。グリコーゲンの枝づくり酵素。

グリセロリン脂質ではリン酸基にアミノ酸や糖などが結合されて多様な構造が出来ます。その際に反応はホスファチジン酸に側鎖が結合するタイプとリン酸化されたアルコールが結合するタイプがあります。いずれも核酸が一旦結合して、活性化状態となってから反応します。結局生成されるのはエステル結合です。グリコーゲン合成でもグルコースそのものが直接つながるわけではなく、一旦UDPをつなげて活性化状態にしてから合成していきます。プライマーと言ってある程度長くなったグルコースのポリマーも必要です。反応の特徴を捉えると、多数ある生化学反応の理解がスムーズにできるようになります。糖に対する飢餓状態ではケトン体が出来ますが、コリ回路は同様にして、一旦解糖で生じた筋肉におけるピルビン酸を乳酸に発酵させ、肝臓に移してグルコースに戻してまた筋肉に転送して解糖系で使う、というように、迅速にエネルギーを調達できる仕組みです。


〈医学部進級対策 講義記録より〉臨床遺伝学

臨床遺伝学の講義予習として、これまで試験問題に出題された問題を解説して授業をすすめている。教科書・レジメが無いとのことで、過去試験問題からその講義内容を追求した。今回は、先週の「がんゲノムプロファイル検査検査」の復習・追加・問題についての再解答を行なった。次に遺伝子治療の具体例として「パーキンソン病」がいくつかの年度で出題されていたので、パーキンソン病の遺伝子治療と、それを比較するためパーキンソン病の幹細胞治療をそれぞれ解説し、概要・原理・利点・問題点について解説した。最後に次回授業のメインとなるX染色体の凝集とそれに関連する「三毛猫」の皮膚色のメカニズムについて概要を説明した。

「がんゲノムプロファイル検査」については、概要について理解されているが、今後の出題を踏まえて、検査方法の流れ、現状の問題点、保険診療での本検査使用規定、本検査の有効性などについて最新データーを踏まえて解説したが、大学試験で出題された背景・本質を理解してもらえたと思う。パーキンソン病の遺伝子治療は理解されているようですが、それと比較して同じ先端医療である「幹細胞導入治療」の詳細も説明し、両者を比較してもらった。

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